かつて堂島米会所が開設されていたこの地は、今もビジネスや交流の拠点として栄え、目の前には堂島川・中之島・御堂筋という大阪を象徴する景観が広がる素晴らしい立地となっています。その中に村野藤吾氏設計で昭和33年に建設された旧・新ダイビルは横連窓と白い壁が堂島川に沿って展開する伸びやかで優美な姿を持つ名建築でした。また、当時としては先進的な試みとして、屋上に緑豊かな樹苑が設けられ、人々の憩いの場として永く親しまれてきました。
今回、ビルの建替えにあたっては、その恵まれた立地条件を最大限に活かすこと、そして旧ビルの持っていた価値を現代に継承することをテーマに、豊かな眺望と緑に包まれ、自然と一体化した、高い快適性と先進性が融合するオフィスビルを目指しました。
ビルは高層化を図ることで、足元に旧ビルの屋上樹園を継承する1000坪に渡る広大な「堂島の杜」を整備。旧屋上樹園からも樹木を移植した上、旧ビル壁面に設置されていた羊彫刻も取り外し角地に再配置し、快適な中にも歴史の厚みを感じる空間としました。外観は、重厚な中之島の建物群と向き合うことを意識し、石貼りの庇が力強く積層する彫りの深い質感あるデザインでビルの格をつくると共に、堂島川に呼応した旧ビルの横基調の伸びやかなイメージも継承したデザインとしました。庇は太陽高度に応じ南に1.8ｍ、東西に3.2ｍの出を持ち、日差しを合理的にカットし、室内からの豊かな眺望の享受に貢献すると共に、空調負荷削減にも大きく寄与しています。
さらには十分な自然換気システムや全館LED照明、構造体のアウトフレーム化による無柱整形空間の実現、災害時の高い電源供給能力対応など、環境・空間・BCPの側面においても非常に先進的で高品質な性能を確保しています。隣接する堂島公園も合わせて整備されたことで、堂島川の水景と堂島の杜が繋がり、街に自然の潤いが引き込まれました。新ダイビルと共に堂島の街がますます活性化していくことを期待しています。