一般社団法人 日本建築協会 ARCHITECTURAL ASSOCIATION OF JAPAN

「続ええとこ」
そぞろ歩く御堂筋 提案コンクール 入選者発表

(一社)日本建築協会は、2017年に創立100周年を迎えます。その記念事業のひとつとして、大阪のまちの活性化のアイデアを募る「大阪ええとこそうせい(創生)プロジェクト」を2009年より実施しています。今回はその第3弾として大阪のメインストリートである御堂筋をとりあげ、御堂筋を「さらにええとこ」にするアイデアを募集しました。橋爪紳也氏(大阪府立大学21世紀科学研究機構教授)と澤田充氏((株)ケイオス代表取締役)によって、2月20日OMMビルにて厳正な審査が行われ応募点数59点の中から6点が選ばれました。なお、表彰式は3月25日に(株)竹中工務店にて行われました。入賞発表は平成27年5月号に掲載する予定です。

応募点数 / 59点
審査日 / 平成27年2月20日

入賞者 タイトル 作品
最優秀賞 丸子 勇人 PATCHWORK LINE

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優秀賞 中村 美香 Happy birthday dear A building!

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優秀賞 中原 文雄 そぞろ歩くイモガイ
INFOMATION CENTER OF MODERN OSAKA

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優秀賞 岩倉 巧 Flowing -漂うように街を歩く-

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優秀賞 堀 沙樹
瓜生 宏輝
湯浅 尚
myイチョウourミドウスジ

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優秀賞 太治 大輔 インキュベーションストリート御堂筋

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順不同

審査講評

■橋爪 紳也 氏

「大阪ええとこそうせい(創生)プロジェクト」の第3弾となる本提案コンクールでは御堂筋をとりあげた。
オフィス街を貫いてキタとミナミの都心を連絡する御堂筋は、昭和12年に竣成した。美しい銀杏並木と整った建築景観でひろく知られているこの大阪のメインストリートでは、人々が歩き、楽しむことができる道路空間へと転じるべく、市民や専門家をまきこんだ議論がさかんだ。側道を通行する自動車を規制、にぎわい創出の社会実験もくりかえし実施されている。自動車優先の発想から脱し、歩行者を重視する都市づくりに向けた提案を求める今回の企画は、まさに時宜を得たものといえるだろう。
寄せられた提案は59点。お子さんから70歳を超える年輩の方まで、また西は広島、東は宮城や福島など、幅広い世代と地域から多数のアイデアが集まった。
応募作を概観すると、多くの人が似通った問題意識を持ち、課題解決の方法を提示していた。列記すれば、個性的な舗装の導入や緑化をはかるもの、直線的な街路に曲線的な歩行者空間を導入するもの、路上・高層フロアにデッキを整備して立体的なネットワークを促すもの、ストリートファニチュアなどの改良によって歩く楽しみを喚起するもの、そして人々を遊歩に誘う新規のイベント提案などに類型化することができる。
審査にあたっては、まず各審査員が評価する作品を選定、59点を15点に絞り込んだ。そののち協議を経て、最優秀賞と優秀賞を確定した。入賞作品は、おおむね先に紹介した各類型のいずれかに含まれるが、なかでも特にアイデアや表現が優れていると評価された作品である。個別の選評を短く記しておきたい。
パッチワーク状の舗装を提案する丸子氏の作品は、機能的なオフィス街に「柔らかさ」「楽しさ」を導入する発想と優れたデザイン性を高く評価した。審査員の総意として、最優秀賞に推した。
堀氏、瓜生氏、湯浅氏の作品は、総体としての並木でなく、個々の銀杏の樹木に着目した点を評価した。街路樹の個性化が、街を楽しく歩く動機づけとなるという視点が良い。実現性が高い提案だろう。
岩倉氏の作品は、人が移動する速度の違いに着目した点が面白い。歩行速度にあえてムラを起こす空間デザインは、ひろく応用が可能だろう。
国際観光への対応を前提とした中原氏の作品は、路上にユニークな造形の簡易な案内所を設けるもの。わかりやすいランドマークが沿道に乏しい現状への問題提起でもある。
中村氏の作品は、オフィス街に新たな祝祭日を設けようとする発想が面白い。重層化する都市の歴史を可視化する機会となる。
太治氏の提案は、御堂筋での賑わいづくりが、船場界隈の活性化にも資するという提案である点を評価したい。
入賞作品に見受けられる柔軟な発想が、今後の街路整備やソフトの具体化に際して、参考になればと願う次第である。

■澤田 充 氏

応募された作品全体を見ると見慣れたものからオリジナリティあるものまで幅は広く、類似する提案も多く見られた。しかもどの提案も提案者が御堂筋をどう捉えているかが反映されていたのが大変興味深かった。その中で今回最優秀作、優秀作には、アイデアのオリジナリティ、目の付け所の面白さ、検討を加えることで現実可能性を感じさせるアイデアのいずれかを持つものが選ばれた。もちろん選ばれなかった提案のなかにも新たな視点で評価できるものもあったことを是非加えておきたい。
最優秀作品の「PATCHWORK LINE」は、直感的に面白いアイデアと感じた。車道を除いた面をパッチワーク状にするということで御堂筋に今までとは違った表情が出すことが出来る案である。加えてパッチワークは多様性を示すとの提案もそれに呼応した路上でのさまざまな活動につながるような余地を感じさせてくれる。もちろん現実のものとするにはまだまだ検討しなければならない点は多く残されているが、車道も含めた舗装に表情をつけるというアイデアもあった中そぞろ歩くという点からもこちらの方が実現性は高いと考えた。ただ、地下鉄の通気塔からの空気を浄化して地上に還元するというアイデアは少し企画の練りが不足していたように感じる。
優秀作に移るが、「Flowing -漂うように街を歩く-」は人が歩くという根源的なテーマに素直に対応している。直線的で歩くスピードの早さを指摘し、御堂筋がそぞろ歩くのには適していない点を的確にとらえた提案である。最短ルートを行く道から沿道のオフィスや商業施設と屋台などのアクティビティをうまくつなげた今の御堂筋にとって大切な提案である。
「そぞろ歩くイモガイ」は、アイデアの基が面白い。御堂筋に分かりやすい目印(ランドマーク?)があることで観光案内や街歩き情報に限らず、さまざまな企画が生まれてくる。ともかく御堂筋に大きなイモガイがあったらインパクトがあるなと感じた、それに尽きる。
「インキュベーションストリート物語」は、インキュベーションスポットと賑わいを兼ね合わせたいい提案。起業家のエネルギーを御堂筋に持ち込むことは面白い。街の人がこれからの人(起業家)を応援できるような仕組みを考えていけば御堂筋のポジションも変えられるかもしれない。
「Happy birthday dear A building!」は、なるほどと思わせてくれた提案。人に誕生日があるようにビルにも完成した時がある。当たり前、でも誰もやっていないこと。ビルの誕生日を祝うことで街の人の心に変化が期待できそうだ。
「myイチョウourミドウスジ」は、イチョウの一本一本に個性を宿らして募金を実施。イチョウの個性を活用し変化をつけそぞろ歩く要素にする。イチョウに目をつけ単調になりがちな風景にリズムをもたらそうと試みるところが評価できる。

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